2011年9月6日火曜日

Report No.2 (2011.8.28)

「フランスの伯父さんが教えてくれること~楽しさはわき道にあり~」
(先生:小柳帝さん)



2011年8月28日、太陽の光が降りそそぐかわなべ森の学校。GOOD NEIGHBORS JAMBOREEがバッハの無伴奏チェロ組曲第一番とともに今年も幕を開けました。サクラ島大学夏の課外授業1限目「フランスの伯父さんが教えてくれること~楽しさはわき道にあり~」(先生:小柳帝 さん)も開場間もなく始まりました。先生役をつとめてくださった小柳帝さんはライター・編集者・翻訳者・フランス語講師と幅広く活躍されている方です。今回の授業では小柳さんの好きな「伯父さん」たちの話を通して、授業を受けてくださった方がそれぞれの学びを持ち帰る。そんな授業になりました。

お話は二つの映画「ぼくの伯父さんの休暇」と「ぼくの伯父さん」から始まります。二本ともジャック・タチが監督・主演をつとめる映画です。ジャック・タチ演じるユロという主人公が映画での「伯父さん」にあたるわけですが、このユロの映像を見ながら授業は進んでいきます。ちなみに、「ぼくの伯父さんの休暇」のほうは中公文庫から小柳帝さんの訳で出版されています。

ここでいう「伯父さん」の存在。例えば家族親戚や世間体とは一つ違う場所で飄々と生きている人、例えば屋根裏のようなところで。でも決して陰鬱な感じはしないし、ユーモアたっぷりに日常のちょっとしたことを少しからかったりしながら楽しく暮らしている。甥っ子をはじめ子供達はそんな伯父さんのことを大好きなのです。そんな話を皮切りに次々とフランスの愛すべき伯父さんたちが登場する授業となりました。

話は少しそれますが、この授業で一つの言葉を覚えました。それは「ノンシャラン」。言葉が発せられたときは「?」と思ったのですが、あとになって調べてみると「無頓着でのんきなさま」とか「自由気まま」という意味だそうで、フランス語なのですね。ここからは、立派な何者かであるのにどこかノンシャランな空気をまとったかっこいい伯父さんたちが続々出てきますよ。

始めに、ピエール・エテックス。「ぼくの伯父さんの休暇」のポスターを描いた人で、もとは道化師でもあり、のちに監督俳優もしている多彩な人です。ちなみにエテックスの奥さんはシルクドゥソレイユの母体となったグループの一員であったそうです。

続いてポスター作家のサヴィニャック。あの作風のなんともいえな温かみとやさしさとユーモアは百聞は一見に如かずだよなぁと思っていたら、ちょうどほぼ日新聞で紹介されていたのでそちらもどうぞ。http://www.1101.com/savignac/index.html

そして最も印象的だったのが、チェリストであり登山家であり俳優でもあったモーリス・バケ。チェロを肩にかついで、両手にストックを持って山を登る後ろ姿のあの写真、山頂で奏でるチェロの静かな音色には一瞬にして心を奪われてしまいました。それでいて、映像で演じているときにはわざと転んでみせたり、あぶなっかしい振りをして笑わせてみたり。写真を撮ったロベール・ドワノーの「パリ市庁舎前のキス」も心とろける素敵さがあります。

ここまで映像や写真を通して見てきたフランスの伯父さんたち。このかっこいい伯父さんたちに共通する空気感ってなんだろうと思って、考えをめぐらせてみると、自分のしていることを心から愛して慈しんでいる感じがあります。でも、それを人に渡すときには決して押し付けがましいことはなく、そっと差し出すようなやさしさやあそびの部分があって、ほんのちょっとユーモアが添えられていて、受け手としてはとても和んだ気持ちになります。気付けば自分もそんな伯父さんのことを好きになっているような魅力がそこにはありました。

そして何より私が感じたのは、このフランスの伯父さんたちの話をしているときの先生の楽しそうな表情と声のトーン。自分の心が惹かれるモノに素直でいていいんだと感じさせてもらうとともに、これからもずっとそれを探し続けていこうと思わせてくれる素敵な授業でした。小柳帝先生、第2の故郷鹿児島での授業を本当にありがとうございました。そして集まってくださった生徒のみなさん、何か感じてもらえたなら幸いです。これからも引き続き、よろしくお願いします。授業は2限目へと続きます。



ドイ マリコ

0 件のコメント:

コメントを投稿